被相続人に成年後見人が選任されていたときの手続きは?
相続は様々な権利義務関係が絡み合うため、専門的な知識が必要になりがちな手続きです。
もし被相続人に成年後見人が選任されていたとしたら、相続にどのような影響を与えるのでしょうか。被相続人が亡くなった後の成年後見人の役割や、相続の手続きについて解説します。
被相続人が亡くなった後の成年後見人の対応は?
被相続人が知的障害や認知症などで判断能力が低下していた場合、成年後見人が選任されている可能性があります。このとき、成年後見人は、被相続人の死後、以下のような手続きを行うことになります。
・家庭裁判所への報告
・終了登記申請
・後見の清算(被相続人の財産整理)
・被相続人の財産の引渡し
まず、成年被後見人である被相続人が亡くなった後、成年後見人は家庭裁判所に報告を行います。このとき、死亡診断書の写しや戸籍謄本が必要です。
次に、法務局で後見終了の登記申請を行い、被相続人の財産を計算し、家庭裁判所に報告します。これは被相続人が亡くなってから、2か月以内に行わなくてはなりません。
最後に、相続人に被相続人の財産を引渡し、成年後見人としての役割は終了です。
ただし、成年後見人の仕事は、これだけとは限りません。いわゆる「死後の事務」が待っているのです。
葬儀や埋葬にも関与?重要な「死後の事務」
葬儀の段取りや主宰、埋葬の手続きをすることなどは、相続人その他の親族が行うことが多いかと思います。
しかし、成年後見人自体が親族の場合もありますし、親族が対応できなかったりする場合には、後見人が葬儀や埋葬の対応をすることが多いようです。これら「死後の事務」は、成年後見人に多大な労力を強いることが多い事柄です。
・埋葬について
本来、被相続人の親族が行うべきことですが、身寄りがいなかったり親族が対応できなかったりすると、成年後見人が取り仕切る可能性が高いです。まずは自治体の担当部署に相談してみると良いでしょう。
・葬儀費用の負担(主宰)
一般的に、葬儀は被相続人の親族が主宰します。そして、葬儀費用は葬儀の主宰者(喪主)が負担するのが原則です。
しかし、成年後見人が管理する財産から、葬儀費用を支出することがあります。例外的な場合ではありますが、被相続人の財産(相続財産)は相続人全員の財産ともいえるため、後見人が管理する財産から葬儀費用を支出することも許されています。ただし、相続人全員の了解が必要です。
・未払いの医療費への対応
被相続人の死亡後、未払いの医療費や施設利用料が請求されることもあります。これらの債務は、成年後見人が清算を行うことも可能です。ただし、金額が大きかったり、債務の内容を精査する必要があったりする場合は、相続人が対処すべきでしょう。
曖昧な成年後見人の死後事務
このように被相続人(被後見人)が死亡したあとは、相続人が担うべき仕事の一部が成年後見人にまわってくることが良くあります。
また、認知症を患う自分の親の成年後見人になっている場合などは、自らが相続人であり、成年後見人でもあるため、負担が大きくなるでしょう。死後の事務は精神的にも肉体的にも負担が大きくなりがちですから、相続に強い弁護士への相談を検討してみてください。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。