相続手続に必要な「出生から死亡までの戸籍」の集め方
相続にはさまざまな手続が必要です。中でも、意外と労力を要するのが「戸籍集め」。
基本的に相続手続では、相続人全員の戸籍謄本を用意しなくてはなりません。
また、亡くなった本人(被相続人)については、「出生から死亡までの戸籍謄本」が必要です。
実は「出生から死亡までの戸籍謄本」を集めるのは、容易なことではないのです。そこで、戸籍収集のポイントについて解説します。
1 結論
先に結論からいうと、以下の手順で集めます。
①住民票から最後の本籍地を確認する
②最後の本籍地を管轄する役所から戸籍謄本(全部事項証明書)を取得する
③②で取得した戸籍謄本から、最後の本籍地の前の本籍地がないかを確認する(従前戸籍)
④従前戸籍の記載がある場合は、さらにその戸籍を管轄する役所から戸籍謄本を取り寄せる
⑤同時に改製原戸籍も確認しながら、他の本籍地がないかを確認し、たどっていく
戸籍の内容を確認して③から⑤を繰り返しながら、全ての戸籍書類を集めます。
2 戸籍の基礎知識
「謄本」って何?
戸籍「謄本」とは,戸籍の「原本」が役所に保管されている紙の帳簿であった時代に、その記載内容を証明するために発行された原本の「コピー」のことです。
戸籍がコンピューター化されている現在では、役所で取得できる戸籍は正式には戸籍の「全部(一部)事項証明書」と呼びますが,呼びにくいことから現在でも「戸籍謄本」と呼ばれています。
要するに、普通「戸籍」と言ってイメージされる紙のことを今でも「戸籍謄本」と呼んでいます。
「改製原戸籍」って?
平成6年6月29日法律第67号により、戸籍はすべてコンピューター化されることになりました。
しかし、全国一斉にコンピューター化の改製作業がされたわけではなく、各自治体がそれぞれのタイミングで進めていきました。
一般的には都市部の自治体は改製が早く、地方の自治体になるほど遅い傾向にあります。なお,全国全ての改製が終了したのは令和2年だそうですので、四半世紀ほどかかったことになります。
コンピューター化で戸籍が改製される際は、その時点で効力がある記載事項しかコンピューター化されませんでした。
ですので、結婚・離婚による転籍や死亡による除籍など、コンピューター化の時点で既に効力がなっている記載事項は改製後の戸籍には記載されず、改製前の戸籍を確認しなければ経緯が分からないことになります。
このコンピュータ化する直前の戸籍のことを「改製原戸籍」といいます。
古い戸籍は読めない
その前の戸籍は、戸籍の冒頭に「~(本籍地)から移籍編成」とあるので、その本籍地をたどります。
なお現在の戸籍はコンピュータで印字されますが、少し古い戸籍は和文タイプライターの印字、さらに古い戸籍は手書きで、時代が遡るほどに流ちょうな毛筆となり、慣れてないとほとんど読めません。
もし、戸籍を発行する役所窓口の方が親切であれば、戸籍を読み取って次に取得するべき戸籍を教えてくれますし、本籍地が同じ自治体で変わっていなければ、同時にあるだけ発行してくれます。
戸籍が読めない方は専門家に依頼するのが良いかもしれません。
3 戸籍の取得方法
戸籍には本籍地が記載されています。戸籍は、その本籍地を管轄する自治体が保管しています。
ですので、戸籍を取得する場所は、その本籍地の役所の市民課になります。
これが近隣にあれば、直接その役所の市民課に出向いて取得できますが、遠方になるとそうはいきません。
人によっては、就職や結婚で遠い出身地から出てきて亡くなる方もいますから、その場合いまの戸籍は近くの役所で取得できても、出生時の戸籍は遠方の自治体で取得しなければなりません。
遠方の自治体には、郵便で戸籍を請求しましょう。
郵便局で定額小為替を買って、戸籍の請求書と小為替を一緒に送って郵送を依頼できます(詳しくは、各自治体のHP等の案内をご覧ください)。
4 戸籍関係書類の収集は弁護士に依頼を
このように「出生から死亡までの戸籍」を集めるのはなかなか骨の折れる作業です。
戸籍は現行の形式になるまでに5回ほど変化しており、明治や大正時代のものは手書きです。手書きの戸籍は、非常に読みにくく、戸籍収集に慣れた人間でも判読しづらいもの。法定相続人を正確に特定し、相続をスムーズに進めるためにも、専門家である弁護士の手を借りるべきと言えるでしょう。
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。