遺言書が見つかった場合、どうすればいいの?
故人が残された親族に思いを託す大切な遺言書。
遺言書は様々な法律や後の手続に絡むため、その扱いには注意が必要です。
今回は遺言書の正しい扱い方を解説していきます。
目次
1 まずは遺言書の保管
遺言書が見つかるほとんどのケースは、自宅において自筆で書かれた遺言が見つかるものです。
遺言が見つかった場合、まずは紛失しないよう大切に保管しましょう。封がされている場合は、開封してはいけません。
自筆で書かれた遺言は、遺言として有効なものかどうか、一見して分からない場合もあります。
それでも一旦は、見つかった状態を変えないでそのまま保管しましょう。
これは後述する、遺言の保管・保全をめぐるトラブルを防止するためです。
2 発見した状況の記録
遺言書を発見した場合は、いつ、だれが、どこで見つけたのか、どのような形で残されていたのか、すぐにメモなどの記録にとどめるようにしましょう。
もし(封がされておらず)遺言書の押印が確認出来たら、その印鑑が近くにないか探してみて、発見したら同様に発見状況を記録にとどめましょう。
これは、のちの検認手続において確認されることがあります。
また、遺言無効確認訴訟のような争いになった場合、遺言の発見状況は遺言の有効性を判断するうえで重要な手がかりになります。
3 関係者への連絡
関係性にもよると思いますが、遺言書を発見した場合、他の相続人に遺言書が見つかったことを知らせるようにしましょう。
封がされておらず内容が確認できる遺言の場合は、その内容を伝えてよいと思います。
先に遺産分割協議を始めてから、あとになって遺言書の存在を持ち出すと、後出しジャンケンのように受け取られてそれだけで不要な誤解を受け、まとまる話がまとまらなくなります。
ただし前述のように、遺言書はきちんと保管しないといけませんので、遺言書の原本そのものを渡してしまうことは避けるべきです。
4 家庭裁判所に持ち込んで「検認」を受ける
自筆で作成された遺言は、家庭裁判所に持ち込み、相続人(代理人)の立会いの元で確認しなければいけません。これを検認手続と言います。封がされた遺言書は、この手続で開封します。
検認は「遺言書の内容を明らかにし、偽装や変造(改ざん)を防ぐ」ことが目的です。
検認については、民法の第1004条に規定があります。
民法第1004条(遺言書の検認)
1遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。
2遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
3前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
4封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
3項にあるとおり、公証役場で作成・管理された「公正証書遺言」については、あらかじめ第三者の立会いのもので作成・保管されていますので検認は不要となります。
5 保管・保全状況をめぐるトラブル
遺言書を勝手に開封してしまうと……?
遺言書を、検認の手続なしで勝手に開封してしまっても、遺言書は無効になりません。
ただし、民法第1005条に規定する罰則(行政罰)の対象になる可能性があります。
民法第1005条(過料)
前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
こちらは行政罰ですから、刑罰ではありません。したがって告訴されたり前科がついたりといった事態には発展しません。
しかし誰も見ていない遺言書を勝手に開けてしまうこと自体が不公平ですし、遺族や相続人とのトラブルの種になります。
遺言書の偽造・変造と相続欠格のトラブル
また、遺言書の「中味を変える」ことは絶対にやめましょう。もし勝手に遺言書の内容を変えてしまうと、相続人の権利を失います。
また、遺言書を見つけたことを隠していたり勝手に捨ててしまったりしても、相続人の権利を失うため、注意してください。
これは民法891条に規定があります。
民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない
(中略)
5号 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
6 遺言書の扱いに困ったら弁護士へ相談を!
このように例え直筆で作成され、自宅に保管してあった遺言書であっても、取り扱いには注意が必要です。
特に「内容の変更(改ざん)」「発見したことを隠す(隠蔽)」「勝手に捨ててしまう(破棄)」は、発覚したときに相続人としての権利を失うばかりか、重大なトラブルに発展する可能性が高いです。
そのため、まずは家庭裁判所に持ち込み、検認の手続を経るようにしましょう。
ちなみに、検認は弁護士に代行してもらうと手続がスムーズです。検認申立書の作成や必要書類(戸籍謄本など)の取り寄せなどの手間や、裁判官への説明、相続人への連絡取次なども代行してもらえるからです。
通常は遺言書の検認が終われば、相続の手続きが待っています。後々を見越して、遺言書が見つかったら弁護士への相談を検討してみてください。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。