遺言執行者って何をしてくれるの?
遺産相続では、遺言書が重要な意味を持ちます。しかし、遺言書に記載されている内容が必ず実行されるとは限りません。そこで遺言書の内容を実現させる者として「遺言執行者」を立てる場合があります。では遺言執行者は、具体的にどのようなことをしてくれるのでしょうか。
遺言執行者は何をしてくれるのか?
まず、遺言執行者が持つ権限について簡単に説明します。
遺言執行者は、「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする」者であり、「他の相続人に勝手な行いをさせない」という役目を担っています。これは民法の第1012条及び1013条に規定があります。
“民法第1012条 (遺言執行者の権利義務)
1.遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2.第644条から第647条まで及び第650条の規定は、遺言執行者について準用する。”
“民法第1013条 (遺言の執行の妨害行為の禁止)
遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。”
では、もう少し具体的に遺言執行者が行う手続きをみていきましょう。遺言執行者が行う手続は、以下のものが該当します。
・遺言書に書かれた子供の認知や相続人の廃除、取消
・株式の名義変更等
・不動産の名義変更(登記の移転など)
・預貯金の解約・名義変更
特に重要なのが「遺言書に書かれた子供の認知や相続人の廃除、取消」です。これは遺言執行者がいなければ、実現することができません。
このように遺言執行者は、遺言書の内容を具現化するための「番人」のような役目を負います。
したがって、遺言の内容を確実に実行したいときには必須の存在といえますね。
遺言執行者の選び方は?
遺言執行者は、原則として未成年者や破産者を除いて誰でもなることができます。ただし、選び方には3つの方法があります。
1.あらかじめ遺言書によって指定する
2.あらかじめ遺言書によって、遺言執行者を指定する人を指定しておく
3.相続手続き開始後、家庭裁判所に選任の申立てを行う(家庭裁判所に選んでもらう)
このように、遺言書で指定することもできますし、後から家庭裁判所に選任してもらうこともできるわけです。
遺言執行者を立てるメリットは?
前述したように遺言執行者を選任することで、「遺言執行者でなければ実現不可能なことができる」ようになります。
さらに、外部の専門家に依頼すれば、相続の場を整然かつ不公平がないようにおさめるという効果も期待できるでしょう。
相続人は、遺言の執行に関して利害関係があります。そのため、相続人が遺言執行者を兼ねる場合には、どれだけ優れた遺言執行者であっても、執行にあたって手心を加えないとは限りません。
また、相続人の中に遺言執行者がいると、その他の相続人の嫉妬や猜疑心などから遺産相続協議が難航する可能性がでてきます。
一方、外部の専門家は完全なる第三者なのでで、利害関係の中にいません。
つまり、弁護士など外部の専門家を遺言執行者として選任すれば、遺言書の内容を公正に実行できる可能性が高まるわけです。
遺言書に万全を期すならば弁護士を遺言執行者に!
弁護士を遺言執行者として選任すれば、自分の死後、遺族同士がいがみあうことのないようにとの想いが実現しやすくなります。
もちろん、身内である相続人を遺言執行者に指定したときと比べると、費用面のデメリットがあることは否めません。
一般的に、弁護士を遺言執行者として指定すると、遺産評価額の1%から3%を依頼料として支払うことになります。遺産の評価額にもよりますが平均は30~60万円に落ち着くのではないでしょうか。
要は、費用面のメリットをとるか、自分の死後の確実さをとるか、という判断になるかと思います。
例えば、相続人に含まれないかわいいお孫さんに、どうしても遺産を相続させたい場合などは、遺言執行者を弁護士に依頼するのが無難かもしれません。
人間誰しもが、自分の死後のことには関与できません。だからこそ、冷静かつ公平に遺言の内容を実行できる専門家の手が必要なのです。
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。