遺産分割協議書の書き方
目次
はじめに
被相続人が亡くなれば相続が開始します。被相続人の財産上の権利及び義務は、相続人全員の共有となります。
しかし、たとえば不動産などは、いつまでも共有にしていると権利関係が複雑になり、利用・処分方法を巡って争いになるもとにもなるため、相続人間で話し合って共有状態を解消していくことになります。これを遺産分割といいます。
そして、遺産分割の内容を確認するものが遺産分割協議書です。
相続人間の協議で遺産分割の内容が決まった場合、口頭の約束では不安ですし、登記名義を変更したり預金を下ろす際に銀行から分割内容を証明する書類を求められます。
そのため、遺産分割協議書という書面を作成するのが一般的です。
では、この遺産分割協議書はどのように作成するのでしょうか?
遺産分割協議書の作成にあたって必要なもの
(1)分割対象財産の正確な情報
遺産分割協議書には、分割の対象となる財産を正確に記載しなければなりません。
不動産
不動産については、
【土地】
所 在 | ○市○町○丁目 |
---|---|
地 番 | ○番○ |
地 目 | 宅地 |
地 積 | 100.00㎡ |
【建物】
所 在 | ○市○町○丁目 |
---|---|
家屋番号 | ○番○ |
種 類 | 木造 |
構 造 | 瓦葺2階建 |
床面積 | 1階 50.00㎡ 2階 49.00㎡ |
といった内容の記載が必要です。
これは、この遺産分割協議書を使って、法務局で相続登記を行うためです。
単に不動産の住所を書けばいいわけではありません。
そのため、不動産については、これらの情報が載っている不動産全部事項証明書(いわゆる登記簿)を用意し、それを正確に遺産分割協議書に記載する必要があります。
預貯金
預貯金については、銀行名、支店名、口座番号まで正確に記載するために、被相続人の預金通帳を準備することが必要です。
もし通帳がなければ、これに代えて、銀行が発行してくれる残高証明書等を参照して遺産分割協議書に記載するのでもよいと思います。
株式その他の有価証券
株式は通常、証券会社が発行する取引残高報告書に保有株式が記載されています。投資信託その他の金融商品も同じです。
遺産分割協議書に記載する際には、それらを参照しましょう。
(2)戸籍
他にも、相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人の戸籍謄本が必要となります。
相続人が誰になるかは、当事者にとっては当たり前に知っていることかもしれません。
しかし、作成した遺産分割協議書に基づいて関係機関に遺産分割を求める際には、必ずこれら戸籍類の提出を求められます。
ですので、あらかじめ取り付けておくとよいでしょう。
(3)印鑑証明書
遺産分割協議書には、実印で押印します。ですので、各相続人が印鑑証明書を取り寄せておきます。
提出先によっては、手続上に実印と印鑑証明書をセットで求められることがありますので、多めに取り寄せて損はないかもしれません。
遺産分割協議書の作成
(1)協議内容の記載
相続人の間で、遺産分割の内容について話し合い、すべての財産をどのように分割するかが決まれば、遺産分割協議書にその結果を記載します。
遺産分割協議書の形式は、特に書式が決まってはいません。協議の結果である分割の内容が記載されていればどのような書式でも構いません。
ただし、①タイトルを「遺産分割協議書」とする、②被相続人の名前を入れる(誰の遺産分割かがわかるように)③協議成立の日付を記載する、の3点は欠かさないことをお勧めします。
(2)相続人の人数分用意する
遺産分割協議書は、相続人の数だけ同じものを用意しなければなりません。
遺産分割協議書は、手書きで作成してもパソコンで作成しても構わないのですが、上記理由から近年はほとんどパソコンで作成されているのが実情です。
(3)相続人全員がすべての遺産分割協議書に署名・押印する
遺産分割協議書が完成したら、相続人全員がそれぞれ自筆で署名し、実印を押していきます。これを、人数分ある遺産分割協議書すべてに行います。
(実印でなくとも有効な協議書になりますが、実務上実印で押印しておくのが無難です。)
ご高齢の相続人にとってはすべて自筆で署名することは大変かもしれませんが、後の紛争を防ぐためにできるだけ自筆で署名するようにしてください。
遺産分割協議書が複数ページに渡る場合には、相続人全員が各ページの間に契印(ページとページの間にまたがるようにする押印)を押すことも忘れないようにしてください。
遺産分割協議書が完成すれば、あとは遺産分割協議書の内容に沿って、実際に遺産分割に必要な手続をすすめていくことになります。
まとめ
遺産分割協議書の作成について実際にイメージを持っていただけたでしょうか。
遺産分割協議の内容は本当にその内容の分割で問題がないのか、また、記載はあっているのかなど、なかなか専門家でなくては分からないこともあります。
また、遺産分割協議書作成にあたって必要な資料を集めるのも素人にはなかなか難しいところもあります。
さらに相続については長年の兄弟間の感情のもつれや不公平感、現在の経済格差などから、当事者同士で話合いをすること自体が困難なケースも少なくありません。
いずれの場合も、遺産分割協議書を作成する前に一度弁護士に相談に行くことをおすすめします。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。