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故人が会社代表だった場合、相続人がするべきことはある?


 

はじめに

事業の代表者が亡くなったとき、相続人は、自分たちの生活はいったいどうなるのか、事業に関係ある財産はどうなるのか、事業の借金まで支払わなければならないのかなど、不安に感じることがあるかもしれません。

故人が事業の経営をしていた場合、相続人は、相続の際にどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

まず、この場合問題となる事業が法人であるのか、個人事業なのかによって大きく違いますので、分けて考えます。

 

個人事業の場合

まず、故人が個人事業主であった場合はどうでしょうか。

 

個人事業は終了する

事業を個人として営業していた場合、個人の死亡によって原則として事業は終了します。

順調にいっていた事業の場合は、相続人がそのまま事業を承継することはよくあるでしょうが、それは相続人が営業用財産を相続し、それをもって相続人が新たに事業を開始する形になります。

 

事業用財産も相続対象となる

個人事業主として事業をしていた場合は、事業用の資産と個人の資産に区別はありません。負債も同様に、事業用と個人の間に区別はありません。

ですので、事業用財産を含めた個人資産すべてが相続の対象となり、事業用財産も相続によって相続人へ承継されることになります。

たとえば事業資金を置いていた口座の預金も、得意先に対する売掛金も、在庫の商品も、各種共済の解約手当金も、すべて相続財産です。

逆に、事業資金としての借入金のほか、取引業者からの買掛金、未払の従業員給与、未納の社会保険料・税金などもすべて相続債務となります。

 

事業用財産を調査することが必要

故人が事業をしていて、家族があまりその事業にタッチしていなかった場合、事業用の財産がどこにあり、事業用資金をどこからいくら借りているか、相続人も知らないことがあります。

ですので、故人が個人事業主であった場合、特に事業上の資産や債務を調査することが、まずは大事になります。

もし、故人が事業について、普段の記帳や確定申告を税理士に依頼していた場合は、確定申告書や帳簿類からある程度正確に資産や負債の状況を確認することができるでしょう。

 

事業の承継

以上のとおり個人事業用の財産はすべて相続財産となりますが、相続人が複数いる場合、誰かが個人事業を承継しようと考えても、事業用資産が遺産分割で分割されてしまうと、事業の継続が難しくなることも考えられます。

対策としては、事業の後継者が決まっていれば、事業用財産と個人の財産を区別して遺言書を作成しておくなどすれば、遺産分割や、事業の承継がスムーズに進むでしょう。

 

個人が会社(法人)経営をしていた場合

法人は当然に存続する

株式会社や特例有限会社などは、いわゆる「法人」です。法人は、個人(生身の人間、自然人)とは別に法が人格を与えたもので、個人である代表者と法人は別の人格になります。

そのため、法人の代表者が亡くなっただけでは、法人には直接影響はありません。

また法人は、わたしたち個人とは異なり、病気になったり死亡したりはしません。

ですので、代わりの代表者を立てる必要があるかもしれませんが、法人の事業はそのまま存続します。

 

法人の資産も負債も、相続の対象とはならない

故人が代表者であっても法人とは別の人格ですので、会社の資産は相続の対象となりません。

たとえば会社が使用している土地建物や、機械などは会社所有の財産であることがほとんどですから、故人の相続人がこれらを相続することはできません。

また、法人が負っている負債も、相続債務にはなりません。

 

個人保証について

しかし、会社の借入金は、代表取締役等の代表者が連帯保証人になっているケースが多いです。

この場合、法人の借入金とは別に、相続人が故人の連帯保証債務を相続することになります。そして、会社が借入金を返済できない場合は、連帯保証人が借入金を返済しなくてはならなくなってしまいます。

ですので、故人が会社の代表であった場合、会社の借入金の連帯保証をしていないか、どれくらい連帯保証をしているか、それを決算書などから確認する必要があります。

会社の経営状態が悪化しているなど、連帯保証人が責任を取らなければならない事態に陥りそうな場合には、会社の借入金の連帯保証人として請求されることを免れるために、相続放棄をすることが考えられます。

ただし、会社の借入金(の連帯保証)だけを相続放棄することはできません。

相続放棄は、一切の相続財産を受け取る権利を放棄する制度ですから、相続財産の中に預金や自宅不動産がある場合にはそれらのプラスの財産も相続放棄しなければなりません。

また、故人の財産を使ってしまったり処分してしまうと、相続放棄はできなくなってしまいますので注意が必要です。

 

会社株式について

ここまで述べた通り、「会社の資産や債務」は会社のもので個人のものではありません。しかし、「会社そのもの」は個人の資産となりえます。

なぜなら、株式会社であれば会社の所有権は株式という形で表され、故人がその株式を保有していることがあるからです。

したがって、この故人が保有していた会社株式が相続財産となります。

故人が有していた株式は、相続財産にあたりますので、相続人が相続することになります。ですので会社において、相続人に株式の名義を変更する手続を行う必要があります。

相続人が複数ある場合、この会社株式を誰がどの程度取得するかは、単に個人の遺産分割にとどまることなく、今後の会社の支配権に関わることになりますので、それを念頭に置いた遺産分割をする必要があります。

たとえば、亡くなった人の相続人が当然に代表権を持つ取締役になるわけではありません。

代表者を誰にするのか決定する権限を有するのは、最終的には会社の株主です。

ですので、故人が会社のすべての株式を所有していた場合は、その過半数の株を取得した相続人は(自分も含めて)次の代表者を指名し、重要な意思決定について決定する権限を持ち、会社を実質的に支配することになるのです。

 

まとめ

故人が会社代表をしていたり事業をしていた場合には、その会社の種類や事業形態によって、法律関係が全く異なってきます。

また、会社に関する規制は、会社の規模や組織形態によっても異なります。また、跡継ぎが誰か、どのように継がせるかによってもするべきことは変わってきます。

相続人の方たちが、故人が経営していた会社がどのような会社であったのか、株は誰が持っているのかをまったく把握していないことも珍しくありません。

必ず、専門家である弁護士に相談して適切なアドバイスを受けるようお勧めします。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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