会社の代表が亡くなった!会社はどうなる
1. 会社の代表取締役がなくなった場合にとるべき手続
会社の代表取締役社長が突然亡くなってしまった。このような場合、どのような手続をとればよいでしょうか。 会社は個人(自然人)とは別個に存在を認められているので、代表取締役が亡くなっても会社までなくなったものとして取り扱われるわけではありません。 しかし、会社の登記簿には代表取締役が登記されていますし、代表取締役が亡くなれば会社を代表して経営する者がいなくなります。 そこで、会社の代表者である代表取締役が亡くなった場合には、新たな代表者を選ぶ必要があります。
- 他に取締役がいて取締役会も設置している会社であれば、取締役会を開催して代表取締役を選任します。
- 取締役会が設置されていなければ、株主総会を召集して(取締役を選び、その取締役を含め取締役会を開き)代表取締役を選任します。
- あるいは、裁判所に請求して一時的に取締役の職務を行う者を選任してもらい、その一時取締役を含めて取締役会を開き代表取締役を選任します(会社法351条2項)。
なお、取締役会設置会社は取締役が3名以上必要です。 代表取締役が亡くなったことで取締役が3名未満になった場合には、取締役が3名以上になるように取締役を追加で選任しなくてはなりません。もし、取締役を補充できないのであれば、「取締役会の廃止」の手続きが必要です。 会社の規模が大きくなかったり家族で経営をしているような場合は、①②の手続などは比較的容易にできるでしょう。 新しい代表取締役が決まれば、亡くなった代表取締役の死亡による退任登記と同時に後任として選任された取締役(代表取締役)の就任登記をします。
2.代表取締役が会社の借入金の連帯保証人になっている場合
亡くなった代表取締役が、会社の借入金について連帯保証人になっていることも少なくありません。 このような場合、代表取締役の相続人は、相続放棄をしない限り、借入金を引き継ぐことになります。 このような場合には、相続人から、新たに代表取締役になった者に対して、株式等の財産を渡す代わりに債務を引き受けてもらえないかなどの打診をすることも考えられます。
3.代表取締役の死亡とともに会社をたたむ場合
代表取締役が亡くなって、会社を存続させることができないような場合はどうすればいいでしょうか? 会社を解散させるか否かは、最終的には会社の株主が判断することです。そのため、会社を解散させるには株主総会によって解散決議をする必要があります。 代表取締役が亡くなった機会に会社をたたむという判断をする会社は、亡くなった代表者が全株式をもっている場合も多いと思われます。そのような場合は相続によって株主となる相続人が解散を決めて、清算手続をすることになります。 清算手続の具体的な流れは、
- 解散した日の財産目録と貸借対照表を作成します。
- 会社の債権者に対して公告または個別に通知をします。
- 現在残っている会社の事務処理関係を清算に向けてすべて終わらせます(残務処理)。(具体的には、債権を取り立てたり、会社が所有する物を全て処分します。)
- ②の期間後に債務をすべて弁済します。
- 債務を弁済しても残った財産がある場合、その残余財産を株主に分配します。
- 決算報告書を作成します。
- 決算報告書の内容について株主総会で承認を受けます。
- 清算結了の登記を申請します。
なお、債務が弁済できない状態で解散するには破産手続を取ることになります。
4.おわりに
代表取締役が亡くなった場合に残された会社や家族がとるべき行動は、その会社に取締役が何人いるか、取締役会は設置されているのか、定款の規定はどうなっているのか、会社をどうしたいのか、株主は誰か……などによって大きく異なります。また、手続自体も煩雑で専門的知識が必要なものが多くあります。 代表取締役が亡くなって困った後継者や相続人はまず、専門家に相談することをお勧めします。 また、代表取締役は、自分が死亡したときにはどうするのか、終活の一環として、あらかじめ、専門家に相談して対策をしておくのがよいでしょう。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。