相続人が誰もいない場合の相続財産管理人選任の申立とは?
人が亡くなったとき、誰か法定相続人がいればその相続人が遺産相続をしますが、天涯孤独な人の場合などには、相続人がいないケースがあります。
相続人がいない場合、相続財産は最終的に国のものになるとされていますが、そのためにはどのような手続きが必要なのでしょうか?
今回は、相続人が誰もいない場合の相続財産管理人について、解説します。
1 相続人がいない場合、財産は国のものになる
相続人が誰もいない場合については、民法が規定を設けています。相続人がいない財産については、所有者がいなくなるので、最終的に国のものになります(民法239条、959条)。このことは、法定相続人がいた場合に、すべての法定相続人が相続放棄をしたケースでも同じです。
しかし、相続人なしに被相続人が亡くなったからと言って、すぐにその財産が国のものになるわけではありません。
亡くなった人に対して債権を持っている人がいる可能性もありますし、実は相続人がいた、というケースもあります。また、特別な関係があった人がいる場合には、そのような人にも遺産を分与しないといけません。
そこで、一見相続人が誰もいないと思われるケースでも、いったんは相続財産を清算するための手続きが必要になります。それが相続財産管理人制度です(民法951条、952条)。。
2 相続財産管理人とは
相続人が誰もいない場合、「相続財産管理人」という人を選任する必要があります。相続財産管理人とは、相続する人がいない場合に相続財産を管理する人のことです。
相続財産管理人の選任が必要なケースは以下のとおりです。
相続財産に利害関係を有する場合
まず、相続人が誰もいないけれども被相続人に対して債権を持っている債権者がいる場合です。この場合、相続財産を管理する人がいないと、債権者は支払いを受けることができません。
特別縁故者
相続人ではないが、被相続人の生前に被相続人と特別な関係にあり(たとえば内縁の妻など)、遺産の一部を譲り受けたいと考えている人は、特別縁故者に対する財産分与の申立ができます。この場合、家庭裁判所が分与を認めると、相続財産の中から認められた額だけ分与を受けることができます。特別縁故者に対する財産分与は、相続財産管理人による管理が終了しなければ認められないため、特別縁故者への財産分与を認めてもらいたい人は相続財産管理人の選任申立をする必要があります。
3 相続財産管理人選任申立の方法
相続財産管理人選任申立の方法をご説明します。
この場合、被相続人の最終の住居地を管轄する家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任申立書という書類を作成して提出します。
必要書類は、以下の通りです。
- 被相続人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
- 被相続人の父母の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
- 被相続人の子どもや代襲者で死亡している人がいれば、その人の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍、除籍、改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票か戸籍の附票
- 遺産内容の資料(不動産登記事項証明書や預貯金通帳、有価証券の残高が分かる書類
- 利害関係人からの申立ての場合、利害関係を証明できる資料
- 財産管理人の候補者を立てる場合には、その人の住民票か戸籍附票
その他、個別の事案によって必要書類が追加されることはあります。
申立にかかる費用は1件800円(収入印紙)で、官報公告費用が3775円必要です。
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このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。