不動産投資で節税
2015年に相続税が増税され、不動産投資による節税に一層注目が集まるようになりました。なぜ不動産投資をすると節税になるのか、その仕組みと注意点についてご紹介します。
なぜ不動産投資をすると節税になるのか
例えば、1億円の遺産を相続する場合、キャッシュで1億円残っていると全額課税対象となります。しかし、その1億円を使って不動産を購入すると、購入価格ではなく、購入価格よりも低い路線価などの評価額に対して課税されるので、節税につながるのです。
路線価は市街地にある土地の評価額で、時価の8割程度と言われています。つまり、相続税の課税対象額が1億円×0.8=8000万円になるのです。
さらに、購入した不動産がマンションで、賃貸物件にした場合、借地権によって所有者の使用が制限されることから、評価額から30%引かれた金額が課税対象となります。上記の例で言えば、課税対象額が1億円×0.8×(1-0.3)=5600万円で、節税効果は極めて高いと言えます。
投資にはリスクがつきもの
株や先物などの投資にリスクがあるように不動産投資にもリスクが伴います。最近では、人口減の影響により空室に悩む賃貸オーナーも増えていますし、火災や災害などのリスクもあります。
また、投資用のローンはたいてい変動金利です。金利が1%上がっただけでも返済額はかなり増額されます。そうした金利の変動にも目を向けなければなりません。
とくに、相続対策の節税目的として不動産投資をする人は、単純に不動産投資を目的としている人より、リスクに無関心な傾向にあります。節税と同時に、収益が下がるリスクがあることも忘れないようにしたいものです。
行き過ぎた不動産投資に要注意
ところで、こうした不動産投資による節税に注力しすぎた結果、相続税申告の際に税務署から「待った」がかかったケースが実際に起こっています。
具体的には、入院中の男性が約3億円のタワーマンションを購入し、1度も物件を訪れることなく1ヶ月後に死亡。相続税評価額が約5800万円となり、1億円もの節税に成功した事案です。生前、男性は認知症を患っており、判断能力に問題があったことと、男性死亡後1年以内に当該タワーマンションを売却していることから、税務署で行き過ぎた節税と判断され、追徴課税が課されました。
さすがにこれはやりすぎている印象を受けますが、不動産投資は長期的な目線で、計画的に行わなければならないことを如実に表していると言えます。
まとめ
このように同じ金額を相続するなら現金よりも不動産投資で相続した方が節税効果が高くなり、手元に残る遺産が増えることがおわかりいただけたと思います。相続人に対してできるだけ多くの遺産を相続させたいとお考えなら、不動産投資を視野に入れてみてもいいかもしれません。
税務署の監査に行き過ぎた節税に気をつけながら、不動産投資のリスクを理解した上で相続対策を進めてみてはいかがでしょうか。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。