養子の相続権
相続人の中に養子が含まれていると、通常の相続のときより気をつけるべきことがあります。というのも、養子になったタイミングや被相続人との関係次第で、相続人としての資格を有していない可能性があるからです。養子が相続権を持っていない状況について詳しくご紹介します。
目次
養子の法的地位
血のつながりがなくても必要な手続きを経て法律上の親子関係を結ぶことを「養子縁組」といいます。養子縁組によって、養子と養親は縁組をした日から血のつながりのある親子関係と同等の身分を取得します。つまり、養子は相続人になれます。
なお、養子には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、前者は再婚による連れ子の養子、節税対策などのために行われるもので、一般的な養子縁組はこれにあたります。一方、特別養子縁組は子の福祉に資するため6歳未満の子どもに限定して縁組をするもので、その基準は極めて厳格なことで知られています。ここでは普通養子縁組した養子の相続権についてご説明します。
養子でも相続できないときがある
養子縁組の手続きより、親権、扶養、相続などの権利義務において血のつながりのある親子と同一の親子関係になったにもかかわらず、場合によっては養子が相続できないことがあります。
例えば、未婚で子どもがいないAが、既婚者のBと普通養子縁組をしたとします。Bには養子縁組する前にCとの間に生まれた子Dがおり、養子縁組後にEという子どもがうまれました。Aより先にBが死亡していて、その後Aが死亡した場合、相続権はどうなるでしょうか。
養子縁組は過去にさかのぼって親子関係が発生するのではなく、養子縁組の手続きをした日から起算して親子関係が発生します。養子であるBが先に死亡した場合、代襲相続によりDとEが財産を相続できるように見えます。
しかし、養子縁組はAとBの関係を法的な身分関係を認めるだけに過ぎず、DはAとBが養子縁組をする前に出生していることから、AとDには法的な関係がないため、この事例ではDは相続人にはなれないのです。その一方で、EはAとBが養子縁組をした後から生まれた子どもですから、Aにとっては孫にあたるため、相続権が発生します。
まとめ
やや複雑な事例をご紹介しましたが、養子の相続権では
・養子縁組をして養親と養子という身分関係が発生。
・養子が先に死亡し、養親がその後死亡。養子の子(被相続人にとっての孫)が代襲相続。
・縁組前に出生した子は相続できず、縁組後に出生した子は相続できる。
上記の3つに注意が必要です。
このように、同じ両親を持ちながら、出生時期と養子縁組したタイミングによって相続できる子とできない子が出て、兄弟で不平等が生じる可能性があります。そのため、遺言を作成するときや遺産分割の際に注意が必要です。不要なトラブルを避けるためにも、遺言書で遺産分割についてしっかりと書き残しておくことをおすすめします。
ご自身やご家族で養子縁組をされた方がいる場合、相続に詳しい弁護士に相談すると、養子の相続権の影響や遺言作成のサポートを受けることができます。お気軽にご相談ください。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。