行方不明の相続人がいる場合の遺産分割
行方不明の相続人がいると、いつまでたっても遺産分割協議を進められないため困ってしまいます。このような場合、行方不明の相続人が不在の状況で遺産分割をするためには、どのような対応をすればいいのでしょうか。 この記事では、行方不明の相続人がいる場合の遺産分割はどうなるのか、どのような手続きが必要なのか、といった点についてご説明します。
目次
行方不明の相続人がいる場合の遺産分割はどうなる?
行方不明の相続人がいる際は、以下の2点を守って遺産分割をしなければなりません。
行方不明の相続人を抜いて遺産分割をすることはできない
基本的に、遺産分割協議は行方不明の相続人も含めてしなければなりません。被相続人が死亡すると、その人の銀行口座は凍結されます。銀行口座からお金を引き出すためには、遺産分割協議書と相続人の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書が必要です。 このような場合は『【ケース別】行方不明の相続人がいる際の対応』でご説明する手続きをする必要があります。
行方不明の相続人にも財産が残るように遺産分割をしなければならない
また、行方不明者に財産を残さないような遺産分割協議の内容にすると、家庭裁判所に不在者財産管理人へ権限外行為を許可してもらえません。基本的に、行方不明者にも法定相続分に相当する財産を残す必要があります。
【ケース別】行方不明の相続人がいる際の対応
行方不明者がいても遺産分割をする際は、以下のいずれかの対応をすることになります。
行方不明が生きていることを知っており、住所を調べていない場合
行方不明者が生きていることがわかっている場合は、まず現在の住所登録がどこになっているのか確認しましょう。 現在の住所登録を確認するためには、戸籍のある市区町村役場の市民課で、戸籍の附票を取得しましょう。ただ、戸籍に関する情報は個人情報になるため、被相続人が亡くなったことがわかる書類が必要です。必要書類について問い合わせをしてから市区町村役場に行くとスムーズです。
行方不明が生きていることを知っており、住所が不明な場合
戸籍の附票を取得し、行方不明者の住所があると思われる場所に行っても行方不明者が見つからないようなこともあります。 このような場合は、行方不明者の財産管財人を選任し、管財人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加することになります。 財産管財人を立てるには、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任申立てをし、許可を得る必要があります。
行方不明の生死も住所も不明な場合
失踪宣告を受けると、行方不明者が相続人から除外されます。 失踪宣告を受けるには、行方不明者の住所地または居所地の家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをします。申し立てをできるのは、法律上の利害関係がある人で、例えば配偶者、相続人、財産管理人などが該当します。 ただ、死亡宣告が認められるのは行方不明者の生死が7年以上明らかでない場合と、震災や船舶の沈没の被害に遭い、被害の後1年以上生死がわからない場合に限ります。 上記の期間に満たないような場合は、 在者財産管理人を選任することになるでしょう。
財産管理をし続けるのを避けたい場合の対処法
不在者財産管理人を選任して遺産分割をすると、不在者財産管理人は行方不明者が現れるまで財産を管理し続けなければならなくなるため、負担になってしまいます。 このようなときによく利用されるのが、帰来時弁済という遺産分割です。帰来時弁済型の遺産分割をした場合、特定の相続人に行方不明者の相続分を預かってもらい、行方不明者には何も相続させない、という遺産分割が可能になります。ただし、行方不明者が現れて請求をされた場合は、その人の相続分にあたる財産を支払う必要があります。 帰来時弁済型の遺産分割をする際は、不在者が帰来し請求をされた場合、相続人は〇〇万円を支払う、といった内容を協議書に追加する必要があります。 ただし、帰来時弁済型の遺産分割を利用できるのは、以下に当てはまるような場合です。
- 帰来の可能性が低い
- 行方不明者に子がいない
- 相続財産が高額でない
まとめ
この記事では、行方不明の相続人がいる場合の遺産分割について解説をしてきました。行方不明者がいる場合は、まずは住所を確認し、連絡を取れるようにしましょう。 住所がわからない場合は、不在者財産管理人を選任する選択肢と、失踪宣告を受ける選択肢があります。しかし、失踪宣告を受けるためには行方不明の期間が7年以上でなければならないので、不在者財産管理人を選任した方がスムーズかもしれません。 財産の管理が大変になりそうであれば、帰来時弁済型の遺産分割を検討してください。
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。