養子縁組の解消(死後離縁)
はじめに
養子縁組は、血のつながらない親と子を法律上の親子として認める制度です。
民法上、故人の遺産を相続できる法定相続人は配偶者及び血族(血のつながりのある親族)に限定されています。
しかし、養子縁組をすれば血のつながりのない親と子でも法律上の親子関係(法定血族関係)として認められ、相続権が発生します。
もしも養親または養子のどちらか一方が亡くなった後に養子縁組を解消する場合、「死後離縁」といって離縁の手続きが必要となります。
今回は、養子縁組を解消するときの流れと、相続との関係について詳しくご紹介します。
養子縁組を解消する手続
養子縁組を解消するには、当事者である養親と養子の合意が必要です。
協議により離縁が成立するのが一般的ですが、どちらか一方の合意が得られない場合は調停や裁判によって離縁することになります。
双方の合意がある場合は、市区町村役場に離縁届を提出すれば法定血族関係は終了します。
なお、養子縁組を解消すれば法律上の親子関係がなくなるので、当然に相続権もなくなります。
死後に離縁したら相続できるか
養親か養子のいずれかが死亡した後に、生存している当事者が離縁(養子縁組の解消)を希望する場合、一方の合意がなくても離縁の手続は可能です。
法定血族が相続権を有するかどうかは、被相続人が死亡した時点での関係が基準となるため、死後離縁しても生存している当事者の相続人としての地位は残ります。
すなわち被相続人の死亡時に法定血族関係があれば、その後に死後離縁しても相続権に影響はありません。
例えば、夫であるAと妻であるBとの間にCという実子とDという養子がいた場合、夫Aの死亡後にDが死後離縁してもDの相続人としての地位は残るため、妻Bの法定相続分は2分の1、CとDが4分の1ずつとなります。 ただし、先に離縁し、その後に発生した相続について相続することはできません。
死後離縁は家庭裁判所での手続が必要
養子縁組は、どちらか一方が死亡したら自動的に解消されるものではなく、必要な手続を経て解消されます。
死後離縁するには、申立人の本籍地または住所地の家庭裁判所に申し立てを行います。 なお、死後離縁に必要な書類は次のとおりです
・生存している当事者の戸籍謄本
・死亡している当事者の除籍・改製原戸籍
・収入印紙800円分
家庭裁判所の許可が下りた後、審判書謄本と確定証明書を添えて市区町村役場に離縁届を提出しましょう。
これが受理されると生存している当事者と死亡した当事者との法定血族関係は終了します。
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。