遺産分割協議をやり直したいときは?
目次
はじめに
通常、相続人全員で遺産分割をするにあたり、遺産分割協議書を作成します。
このとき、相続人それぞれの実印を押印して印鑑証明書を添付するわけですが、特段の理由がない限りはやり直しができません。
それでも遺産分割協議をやり直したい場合、どうしたら良いのでしょうか?
遺産分割協議のやり直しが可能なケースとは
冒頭でも述べたように、遺産分割協議は基本的にやり直すことができません。しかし、特定の条件を満たせばやり直しが可能なこともあります。
その条件とは、以下のようなものです。
1.前回の遺産分割協議時には判明していなかった多額の財産が見つかったとき
2.本来は相続人として協議に加わるべきだった人物を故意に除外していたとき
3.本来は相続人として協議に加わるべきではない人物を含めていたとき
4.遺産分割協議の過程で、一部の相続人をだましたり、脅迫したりと意思表示に問題があったとき
5.被相続人が認知した子供(婚外子など)を除外した場合
1の場合は、新たに発覚した遺産部分についてのみ、遺産分割協議を行うという方法も選択できます。遺産分割協議書は、財産の一部のみを対象にすることも可能だからです。再度全ての遺産について遺産分割協議をし直すという手間を考えると、この方法が現実的と言えるかもしれません。
また、2~5については、法律的に無効となるケースですから、遺産分割協議の取り消しや解除を行い、改めてすべての相続財産につき遺産分割協議をやり直すことになります。では、これ以外のケースでも遺産分割協議のやり直しはできるのでしょうか?
有効な遺産分割協議でもやり直し可能!ただし注意点も‥
新たな財産が出てきたり、法律的に無効な遺産分割協議であったり…といった場合に限らず、遺産分割協議のやり直しは可能です。ただし、それには「相続人全員の合意が必要」になります。全員の合意さえあれば、再スタート自体は可能なわけです。相続登記がされていても、その登記を抹消し、新たに作成した遺産分割協議書をもとにして登記ができます。
ただし、一度でも有効になった遺産分割協議をやり直すときには、注意も必要です。それは「税負担」に関すること。
法律的に有効である遺産分割協議の結果、取得した財産については、当然ながら所有権を取得することになります。
そして、税務上、遺産分割協議をやり直して財産を配分しなおすということは、財産を譲渡もしくは贈与することと同じと判断されます。
このとき、所得税や贈与税が新たにかかってくる可能性があります。
つまり、遺産分割協議の手間に加えて、相続人それぞれが税負担を強いられる可能性が高くなります。
前項のように法律的に無効なケースであればまだしも、元々有効であったものをやり直すには、相応のコストが必要という事を覚えておきましょう。
遺産分割協議のやり直しには専門家のサポートが必要
このように遺産分割協議自体は、無効である場合や相続人全員の合意がある場合には、やり直すことができます。
しかし、遺産分割協議自体、非常に手間のかかる手続ですし、分割方法も複雑になりがちです。
あらかじめ遺産分割協議のやり直しを視野に入れた遺産分割協議書を作ることも可能ですが、いずれにせよプロの手を借りるのがベストでしょう。
ここでいうプロとは「相続に強い弁護士」です。
遺産分割協議のやり直しには、過去の利害関係も含めた調整が必要になりますから、
公平かつ中立な立場の専門家として弁護士に依頼するのがおすすめです。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。