遺産分割調停が遠方で出頭できない
目次
1.遺産分割調停に出頭できなくても調停成立は可能
遺産分割調停に出頭できなくても調停を成立させることが可能であることは、家事事件手続法第270条に定められています。ただし、以下3つの条件を満たす必要があります。
①遠隔地に住んでいるなど出頭することが困難であるという明確な理由があること
②あらかじめ調停条項案を受諾する旨の書面を提出していること
③他の当事者が期日に出頭して調停条項案を受諾すること
遺産分割調停は、成立するまでに何回も期日を重ねるため、期日のたびに出頭する必要が出てきます。
弁護士などに依頼していれば代わりに出頭してもらうこともできますが、調停を成立させるときには当事者が出頭しなければならないというのが原則です(この点は各裁判所によって運用が違います)。
しかし、万が一、遠隔地に住んでいて出頭が困難な場合には、前記条件をクリアすれば、遺産分割調停に出頭しなくても、調停を成立させることができるのです。
ただし、あらかじめ調停条項案へ受諾する旨の書面を提出するということは、自分にとって不利な遺産分割の条項であっても調停が成立するリスクがあることを覚悟する必要があります。
2.そもそも遺産分割調停に出頭する裁判所はどのようにして決められるのか
遺産分割調停を行う家庭裁判所は、相手方となる相続人の住所を管轄する家庭裁判所となります。
たとえば、
・相続人A:東京都
・相続人B:大阪府
・被相続人:北海道
というケースで、相続人Aが遺産分割協議を申し立てる場合は、相手方となるBの住所地を管轄する大阪府の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。
他方、相続人Bが相続人Aに対して申し立てを行うときには、東京都の家庭裁判所が管轄となります。また相続人双方で話し合いをして合意ができれば、被相続人の住所地である北海道で遺産分割調停を行うことも可能となります。
3.遺産分割調停は電話会議で出頭することもできます
遺産分割調停は、電話会議で出頭できることが家事手続法第54条と第258条第1項に定められています。
しかし、調停委員会の意向や遺産分割の内容によっては、電話会議が認められないこともあります(それでも、代理人弁護士が事務所から電話をつなぐ場合には認められやすい傾向にあります)。
ですので、あらかじめ電話会議が可能であるかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
4.遺産分割調停の調停条項案に受諾できず出頭できない場合は?
①遺産分割調停の調停条項案に受諾できない
②遺産分割調停にも出頭できない
③電話会議で遺産分割調停に出頭することも認められない
これらすべてに当てはまる場合は、調停では遺産分割を成立させることができず遺産分割審判で決着をつけることになります。
遺産分割調停は、1人でも反対している人がいれば調停不成立となってしまいます。そして、調停不成立となった場合には家庭裁判所での遺産分割審判が行われ、それでもなお決着がつかない場合は高等裁判所へと争いが続くことになります。
このような長期に渡る争いを避けるためには、遺産分割協議や遺産分割調停などの段階で相続人それぞれが少しずつ協調したり譲歩したりする姿勢が大切になってくるのです。
もし、遺産分割調停が遠方で出頭できずに困っている場合には、まずは一度、遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。