他の相続人が、多額の死亡保険金を受け取っている
■相続人が生命保険金の受取人になっているケース
被相続人が自分に生命保険をかける際に、保険金の受取人を便宜的に長男にし、そのまま受取人を変更することなしに死亡するケースはよく見受けられます。
このように、相続人の一人を受取人として被相続人に多額の生命保険がかけられており、被相続人の死亡によってその相続人が多額の生命保険金を受け取ったとします。その場合、受け取った生命保険金は遺産分割に影響するでしょうか。
■生命保険金は遺産分割の対象外
結論から言えば、その生命保険金は原則として遺産分割に影響を与えません。なぜなら、生命保険金は保険契約から発生する受取人固有の権利であり、相続によって受け取るものではないからです。
ですので、生命保険金を受け取った相続人も、それによって遺産分割の分け前が減ることは原則としてなく、それが長男であれば他の兄弟と同じだけ相続分を主張できます。
■最高裁の例外
しかし、それでは多額の生命保険金を相続人の一人が受け取った場合、相続人の間で不公平な結果になることは否めません。
最高裁は、「保険金受取人である相続人と、その他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものと評価すべき特段の事情がある場合」、要するにあまりにも他の相続人との間で不公平になりすぎる場合には、すでに生命保険金を受け取っていることを当該相続人の特別受益として遺産分割の際に考慮してよいとしています。
実際の裁判例では、生命保険金がそれを除く遺産金額の100%に近いケース、60%になるケースでそれぞれ特別受益の認定がされています。これはその他の事情も踏まえたケース判断ですので、一般化できるわけではありませんが、一つの参考になると思います。
調停・審判に関する記事一覧はこちら
https://dev-souzoku.undo.jp/column_cat/tyoutei-saiban/
このコラムの監修者
-
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。